終活を行うなかで、気になることのひとつが「お墓をどうするか」です。
新たに墓地を購入してお墓を立てるのか、それともはじめから永代供養にするか、さまざまな選択肢があるため、迷う人も増えているかもしれません。
一方で、家墓がある人の場合、「いずれは墓じまいを検討するかも」とは考えていても、とりあえず親世代は家の墓に入るものと疑っていない人がほとんどでしょう。私も、同じように考えていました。
しかし、必ずしもそうとは限らないようです。今回は、亡くなる間際に家墓への埋葬を拒まれた知人のお話を紹介します。
みんな家墓に入るものと思っていたら……
その知人宅では、菩提寺に代々続く墓を持っていました。そのため、家の人が亡くなった際はその墓に埋葬されるもの、と思い何の疑問も持っていなかったそうです。
しかし、知人のお父様が亡くなる際、自分が死んだらすぐに確認して欲しい、と手紙を託されたそうです。そしていざ、お父様が亡くなり手紙の内容を確認すると、そこには驚くような内容が記されていました。
「寺にある家墓には埋葬しないでほしい」
予想だにしていなかった内容に、知人は心底驚いたそうです。
しかも理由は、そのお寺の住職が嫌だから、と。
「そんな理由で!?」と思ったものの、知人はお父様の希望を叶えることにしました。
そこからは怒涛の準備に追われたそうです。
菩提寺からの電話「お葬式、どうするの?」
田舎だったこともあり、お父様が亡くなった話はすぐに菩提寺にも伝わりました。檀家としてある程度の交流もあったことから「お葬式、どうするの?」という連絡が住職から知人のもとへ入ったそうです。
住職としても、家墓があるのだから、当然自分のところで葬儀を行うものと思っていたのでしょう。
「故人の希望により神道で執り行う」と伝えると、「その場合、寺の墓には埋葬できない」と怒ったような口調で伝えられ、電話を切られたそうです。
普通なら、寺に埋葬できないというのは大変困った状況なのでしょう。
しかし幸いにも知人宅には、菩提寺のほかに、農地にも古い墓があったのです。
そのため、神道でのお葬式を執り行い、農地にあった古いお墓に埋葬して事なきをえたそうです。
今ある墓をどうするか
菩提寺との関係は少し気まずいものになったものの、今のところは、菩提寺にある墓と農地にある墓それぞれにお墓参りをしているそうです。
しかし、今後について考えるべきことが残っていると知人は言います。
お父様の伴侶であるお母様が亡くなったときについては、お母様本人がお父様と同じところへの埋葬を希望しているため、また神道での葬儀を執り行い、農地の墓への埋葬を予定しているそうです。
問題はそのあとです。知人やその奥様・お子様たちはどのお墓に入るのか。
知人いわく、菩提寺の現住職はあまり好きではないけれども、自分が亡くなる頃には代替わりしているだろうから特に問題はない、と。
しかし、父母だけ別の墓に入って自分たちの代から寺の墓というのはどうなのだろう?とも思うそうです。
そのため、菩提寺のほうを墓じまいして農地にある墓に改葬するか、それともどちらの墓も墓じまいを行って永代供養できるところを探すかなど、いろいろと迷っているそうです。
お父様の埋葬については「住職が嫌だとか、そんな自分都合の理由なんだったら、自分が生きているうちに墓じまいでも改葬でもしてくれていたら良かったのに……」とこぼしていたのが印象的でした。