日本では仏教・神道・キリスト教・無宗教など、さまざまなスタイルの葬儀があります。なかでも一般的に多いのは仏教による葬儀ですが、そのなかでもさまざまな形式があります。
この記事では、仏教の葬儀を中心に、規模や形式による葬儀の種類について、それぞれの特徴を紹介します。
葬儀の種類【規模・形式による分類】
ここでは主な葬儀の形式について
一般葬(従来型の葬儀)
一般葬は、通夜、告別式、火葬という一連の流れで執り行われる、従来からの葬儀形式です。
親族・友人・知人・職場関係者など幅広い方々に参列いただくため、参加人数は故人の交友関係によって数十人から百名以上になることもあります。
参加が見込まれる人数によって会場や返礼品の手配が変わり、それによってかかる費用も大幅に異なります。
故人を知る多くの方に偲ぶ機会を提供できるのは大きなメリットですが、一方で準備に時間と手間がかかるため遺族の負担が大きくなるケースが多く、費用も高額になりやすい傾向にあります。
家族葬
家族葬は、ご家族や親しいご親族、特に親しかった友人など、参列者を事前に限定して、限られた方々で執り行う葬儀です。通夜、告別式の基本的な流れは一般葬と同様です。
参列者数が少ないため、一般葬と比較して費用を抑えることができるケースが多いようです。
ただし、基本的な葬儀費用は発生するため、人数に比例して大幅に安くなるわけではない点は注意しましょう。
また、家族葬を行う際は、参列をご遠慮いただく方への連絡方法や時期を慎重に検討する必要があります。事前に「家族のみで葬儀を行います」という旨をお伝えし、理解を求めることが大切です。
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密葬
密葬は、近親者のみで先に火葬まで済ませ、後日改めてお別れ会や本葬を行う葬儀形式です。著名人や社会的地位の高かった方が選択されることが多く、二段階に分けて葬儀を執り行います。
家族葬と似ているように捉えられることもありますが、基本的には家族など近親者のみで見送って完結する家族葬とは異なり、密葬の場合は後日、より多くの方を招いてのお別れ会や本葬が前提となっています。
お別れ会や本葬を執り行う際、すでに火葬を済ませているため、遺影を中心とした追悼の場となります。
密葬とお別れ会または本葬の両方を行うため、トータルの費用は高額になる傾向があります。しかし、家族だけで静かにお別れの時間を設けることが可能となります。
一日葬
一日葬は、通夜を行わず、告別式と火葬のみを一日で執り行う葬儀形式です。葬儀の日程を一日に短縮することで、遺族や参列者の負担を軽減できます。
また、通夜にかかる費用(会場費、料理代など)を削減できるため、二日間の葬儀と比較して費用を抑えることが可能です。
ただし、宗派や寺院によっては通夜を重視する考え方もあるため、菩提寺が一日葬で葬儀を行うことに難色を示すケースもあるようです。「高齢の遺族が多く体力的な負担を軽減したい」「遠方からの参列者が多いため開催日数を一日にまとめたい」など、理由をしっかりと伝えられると良いでしょう。
葬儀を執り行うことが決まってからではなく、事前に一日葬での開催を検討している旨を伝え、打診しておくと良いかもしれません。
直葬
直葬は、通夜・告別式を行わず、火葬のみを執り行う形式の葬儀です。火葬場での短時間の読経やお別れの時間を設けることもありますが、基本的には火葬に必要最小限の儀式のみとなります。
費用を抑え、葬儀を執り行う手間を抑えることができるため、近年、増えてきている形式です。
しかし、後になって「もう少しちゃんと見送ってあげれば良かった」と後悔する遺族もいるようです。
そのため、直葬を選択する際は、後悔のないよう家族でよく話し合うことが重要です。また、菩提寺がある場合は、直葬では納骨を断られるケースもあるため、必ず事前に相談しておきましょう。
その他の葬儀形式
社葬 社葬には、家族による密葬後に会社が主催するお別れの会形式と、最初から会社が主催する通常の葬儀形式があります。会社の代表者や重要な役職にあった方の葬儀として執り行われ、大規模な式典となることが多いです。会社の規模や故人様の地位によって内容が大きく異なります。
合同葬 合同葬は、会社と遺族が共同で主催・費用負担する葬儀形式です。社葬とは異なり、家族と会社が協力して一つの葬儀を執り行います。費用や準備の負担を分担でき、家族の意向と会社の意向を両立させることができます。
お別れ会・偲ぶ会 お別れ会・偲ぶ会は、従来の葬儀形式にとらわれず、故人様らしい形でお別れをする場です。ホテルやレストラン、思い出の場所などで開催され、故人様の趣味や人柄を反映した演出が可能です。
既に火葬を済ませた後に行うことが多いです。
音楽葬 音楽を中心とした無宗教の葬儀形式で、故人様が愛好していた楽曲の演奏や合唱などを取り入れます。故人様の人生を音楽で表現し、温かい雰囲気でお別れすることができます。
骨葬 地域によっては、火葬を先に済ませてからお骨の状態で葬儀・告別式を行う骨葬という形式もあります。主に関西地方などで見られる地域的な慣習です。
仏教葬儀の基本的な流れ
仏教葬儀には、宗派により細部に違いがありますが、基本的な流れをご紹介します。
通夜の流れ 通夜は、故人様との最後の夜を過ごす大切な時間です。僧侶による読経、焼香、通夜振る舞い(お食事)が基本的な流れとなります。最近では、2時間程度で終了する「半通夜」が一般的になっています。
告別式の流れ 告別式では、僧侶による読経の後、参列者による焼香を行います。その後、故人様との最後のお別れの時間を設け、棺に花を入れるなどして送り出します。
火葬の流れ 火葬場では、僧侶による読経の後、炉前でのお別れを行い火葬します。火葬中は控室で待機し、収骨(お骨上げ)を行って終了となります。
※注意事項 宗派により儀式の内容や作法が異なります。詳細については、菩提寺や葬儀社にご相談ください。
葬儀の種類を選ぶ際のポイント
適切な葬儀形式を選択するために、以下の要素を総合的に検討しましょう。
故人の遺志 最も重要なのは故人様のご希望です。生前に「家族だけで静かに」「多くの人に見送ってもらいたい」などの意向を示されていた場合は、その想いを尊重することが大切です。
家族の希望 遺族の体力的・精神的状況も重要な判断材料です。高齢の遺族が多い場合は、負担の少ない形式を選択することも必要な配慮です。
参列者の規模 故人様の人間関係の広さや、参列を希望される方の数も考慮要素です。多くの方が参列を希望される場合は、それに応じた形式を検討しましょう。
菩提寺との関係 菩提寺がある場合は、必ず事前に相談し、葬儀形式について了承を得ることが重要です。特に直葬や一日葬については、宗派によって考え方が異なる場合があります。
地域の慣習 お住まいの地域の慣習や、近隣との関係も考慮すべき要素です。地域によっては、特定の形式が一般的とされている場合もあります。
予算と費用の考え方 葬儀費用は葬儀社・地域・内容により大きく異なります。複数社から見積もりを取り、内容を詳しく比較検討することが重要です。基本料金に含まれるものと、追加料金が発生する可能性のある項目を事前に確認しておきましょう。「安かろう悪かろう」とならないよう、価格だけでなく内容もしっかりと確認することが大切です。
生前準備という選択肢 生前に葬儀の内容や業者を決めておくことで、家族の負担を軽減することができます。本人の希望を明確にでき、費用面でのメリットがある場合もあります。エンディングノートの作成や葬儀社との事前相談など、元気なうちに準備を進めることを検討してみてください。
葬儀の形式についてのよくある質問
Q: 家族葬でも香典は受け取りますか?
A: 家族葬でも香典を受け取るかどうかは、ご家族の判断によります。「香典辞退」とする場合は、事前にその旨をお知らせすることが大切です。受け取る場合は、後日香典返しの準備が必要になります。
Q: 直葬でも僧侶を呼べますか?
A: はい、直葬でも僧侶による読経を依頼することは可能です。火葬場での短時間の読経や、火葬前の自宅や安置施設での読経などの形で対応していただけます。
まとめ
葬儀の種類は、その規模や所要日数などにより、さまざまな形式があります。故人の意向や家族の状況、参列者の規模や予算など、さまざまな要素を総合的に判断して選択することが大切です。
いずれの形式を選ぶにしても、最も大切なのは故人への想いと、家族が納得できる形でお別れをすることです。費用や世間体にとらわれすぎず、故人様と家族にとって最適な形を見つけましょう。
葬儀は人生の中で何度も経験するものではありません。不安や疑問がある場合は、信頼できる葬儀社や菩提寺に相談し、十分な説明を受けた上で決定するようおすすめします。
また、自分の葬儀について生前から準備を進めることも可能です。いざという時に家族が慌てることのないように準備しておくことを検討してみても良いでしょう。